美容室のエプロンを新調するとき、色や形から考えはじめる方が多いのですが、満足度を決めるのは機能です。一日中身につけて、道具を出し入れし、毎日洗うもの。使いにくい一点があると、それが毎日効いてきます。
この記事では、実際に美容師さんとご一緒したオーダーから生まれた現場発の機能を先にご紹介します。そのあとで、毛がつきにくい生地の選び方と、丈の決め方に進みます。
エプロン専門店エレグランス(ELEWORK)は2009年の創業以来、2,400件を超えるオーダーメイドを手がけてきました。美容室・ヘアサロン・エステ・ネイルサロンの現場から、日々ご相談をいただいています。
胸に小さめのポケットを付けると、必ずこの問題が出ます。入った髪の毛が取り出せない。メモ帳やスマホを入れるサイズだと、指が奥まで届かないからです。
美容師さんとご一緒したオーダーで、この悩みから生まれたのが「髪の毛が溜まらないポケット」です。ポケットにファスナー(チャック)を付け、開ければ中に溜まった髪の毛をそのまま出せるようにしました。洗濯のときも、開いて払うだけで済みます。
小さなことのようですが、毎日何十人もの施術をするサロンでは、この「取れない髪の毛」が地味に効いてきます。ポケットの底に髪が溜まったままメモ帳を出し入れするのは、気持ちのいいものではありません。
いきさつは美容師さんと一緒に作ったエプロンの記事に書いています。当店の独自仕様ですので、ご要望をいただければお付けできます。
ダッカール(ヘアクリップ)を挟んでおくためのループも、美容室のお客様のご要望から形になったものです。
施術中、ダッカールは何本も出し入れします。ポケットに入れると底で絡まり、取り出すのに手間がかかる。かといって台に置きに戻るのは動線が悪い。そこで、紐やポケット口に沿って細いループを縫い付け、そこに挟んでおけるようにしました。手元を見ずに抜き差しできる位置に付けるのがコツです。

ループの本数・位置・太さは、お使いのダッカールの厚みと、右利き左利きに合わせて決めます。追加費用のかかる仕様ではありませんので、必要であれば遠慮なくお申し付けください。
同じ発想でタオルを掛けるループもお付けできます。過去のオーダーでは、腰の右側にタオルループを1本入れました。ダッカール用とタオル用は太さも位置も変わりますので、何を掛けたいかを先にお聞かせください。
美容師さんの道具は、ブラシもコームも太さと長さがばらばらです。ひとつの袋にまとめて入れると、倒れる。ぶつかる。取り出すときに他のものまで飛び出す。
ですので仕切りの幅と深さを、実際にお使いの道具に合わせて決めます。ポケットは大きさ・位置・数を全部吟味する対象です。ブラシの先が当たっても破れないよう、生地の強度にも配慮しています。
ポケットの数を増やしてもお見積りは変わりません。数で悩むより、何を入れるかで設計するほうが結果的に使いやすくなります。
「命の次に大事」と言われるハサミは、エプロンではなく腰のポシェットに入れる方が多くいらっしゃいます。
このとき、エプロンの腰まわりにポケットや紐の結び目があると、ポシェットとぶつかって出し入れの邪魔になります。ポシェットをお使いかどうかを先にうかがい、干渉しない位置に設計するのはそのためです。オーダーの打ち合わせで必ず確認している項目のひとつです。
低い位置で着るカフェ風のエプロン(ブルックリンスタイル)は、見た目は良いのですが腰の一点で吊るぶん疲れやすくなります。革紐のタイプも格好いいのですが、革そのものが重いうえ金具が当たると痛みが出ますし、洗えないのが難点です。
一日中立って動く美容室では、自分の腰幅でしっかりホールドするバッククロスタイプがいちばん楽だと考えています。洗濯機で洗って乾燥機にかけられることも、毎日着るものとしては外せません。
1. 髪の毛が溜まらないポケットを付けるか
2. ループは何を掛けるか(ダッカール/タオル)
3. 入れる道具は何か(仕切りの幅と深さが決まります)
4. ハサミはポシェットか、エプロンか
5. 背中はバッククロスか
「その業種でしか出てこない不便」を形にできるのが、オーダーメイドの本来の価値だと考えています。既製品を探して妥協するより、はじめから自分たちの動きに合わせて作るほうが、結局は長く使えます。
正直に申し上げます。どんな生地でも、毛が一切つかないということはありません。私たちが「毛がつかないエプロン」と呼んでいるものも、正確には「つきにくく、ついても払えば落ちる」エプロンです。ここを誇張してお伝えすると、届いたあとにがっかりさせてしまいます。
そのうえで、生地の選び方で差は確実に出ます。同じ一日を過ごしても、シャワーで流す前にほとんど払い落とせるものと、繊維の奥まで刺さって取れないものがあります。
カットした毛が生地に残る原因は、大きく3つです。
織りの目に入り込むのが一つ。目の粗い生地は、繊維と繊維のすきまが毛の直径より大きく、そこに毛が刺さって抜けなくなります。毛羽に絡まるのが二つめ。表面が起毛している生地、たとえばネル地やスウェット系は、細かい毛羽が毛を捕まえます。静電気で吸い寄せるのが三つめです。乾燥する季節に化繊のエプロンが毛だらけになるのは、これが効いています。
裏を返せば、選ぶべき生地の条件は3つに絞れます。目が詰まっていること。表面が平らなこと。静電気が起きにくいこと。この3つです。
エレワークで扱う素材は4系統あります。無地(ポリエステル・綿ほか)/サテン/ダンガリー/リネン(厚手・高級麻100%)です。この中から美容室向けに絞ると、判断はこうなります。
| 素材 | 毛のつきにくさ | 補足 |
|---|---|---|
| ポリエステル系の平織り・綾織り | ◎ | 目が詰まり表面が平滑。洗濯にも強く、ノンアイロンで扱いやすい |
| サテン | ○ | 表面がなめらかで毛は滑りやすい。光沢が出るので雰囲気重視の店舗向け |
| ダンガリー | △ | 風合いは良いが綿の目が粗めで、細い毛は入り込みやすい |
| リネン | △〜○ | 汚れは染み込みにくいが、繊維の毛羽立ちがあるため毛の付着は素材次第 |
美容室で「毛が気になる」というご相談をいただいたときは、ポリエステル系の目の詰まった生地を第一候補にご提案しています。洗濯機で毎日洗えて型崩れしにくいという点でも、サロンの運用に合います。
さらに一段効かせたいときは、撥水仕様という手があります。撥水加工は水をはじく目的で施しますが、副次的に繊維の表面が滑らかになり、毛が絡みにくくなるという効果があります。
美容室では、この撥水仕様がとくに相性の良い場面があります。カラー剤やシャンプーの水はねです。毛だけでなく液体の汚れも弾きますので、シャンプー台まわりに立つ時間が長い方ほど効果を感じやすくなります。
なお、この撥水仕様の生地はトリミングサロン向けのエプロンにも採用しています。テレビ番組「相葉マナブ」でご着用いただいたエプロンもこの系統です。ただしトリミングは扱う毛の性質も汚れ方も美容室とは別ものですので、そちらは別途、専用の設計でお作りしています。
撥水加工は生地の種類によって扱いが変わります。ご希望があればお見積り時にご相談ください。
機能と生地が決まったら、最後に丈です。「膝上くらいの丈だと一般的に何cmですか」というご質問を、お客様から直接いただいたことがあります。カタログを見ても書いていないので、店に聞くしかないという状態でした。
太ももの半分から下あたりに裾がくる長さです。動きが最も軽く、しゃがむ・かがむの多い作業に向きます。シャンプー台まわりや、立ったり座ったりを繰り返す施術では、この丈が扱いやすいです。
裾が短いぶん、脚まわりの毛や水はねは防ぎきれません。そこを許容できるかで判断が分かれます。
「膝上に届かせたい」というご希望なら、50cmをおすすめしています。理由は身長差です。
たとえば45cmで作ると、身長160cmの方には膝上でも、170cmの方には太ももの途中で止まってしまいます。逆に55cmまで伸ばすと、背の低い方には膝が隠れて重たく見えます。50cmは、スタッフの身長にばらつきがある店舗で、全員が「膝上」に収まりやすい寸法です。ワンサイズで揃える店舗ほど、この差が効いてきます。
ここは間違えやすいところなので、はっきり書きます。丈は床からの高さではなく、腰の位置からの長さで測ってください。
エプロンは腰の位置で結ぶものですから、基準点は腰です。床から何cmという測り方をすると、身長や靴の高さで基準がずれて、出来上がりが想像と変わってしまいます。メジャーを腰骨のあたりに当てて、裾を下ろしたい位置までを測る。これだけで、仕上がりのイメージのずれはほとんどなくなります。
カラー剤やパーマ液の飛散が気になる場合は、胸当てのあるタイプが安心です。一方で、インナーのデザインを見せたいというお店や、着脱を早くしたいお店では腰巻きタイプが選ばれます。
判断の目安をひとつ。施術中に前かがみになる時間が長いかを考えてみてください。長ければ胸元への飛散が増えるので胸当てあり、短ければ腰巻きで十分なことが多いです。
なお呼び方について。サロンエプロンは腰から下だけを覆う胸当てのないエプロンの総称で、腰巻きエプロンはほぼ同じものを指します。ギャルソンエプロンとソムリエエプロンは飲食店由来の呼び名で、丈が長め(膝下からくるぶし近く)のものを指すことが多くなります。お問い合わせの際は、名前より「丈は何cmくらい」「胸当ては要る/要らない」でお伝えいただくほうが確実です。
本体と紐で色を変える2配色は、費用をかけずに「うちの店の一着」に見せられる方法です。ある店舗では、当初のご提案から本体と紐の色を逆にした組み合わせを選ばれて、それが決め手になりました。
サロンの内装カラーに寄せると効果が高くなります。おしゃれに見せたいという抽象的な希望も、内装の色を基準にすると具体的な指定に変わります。
トータルビューティーサロンINFINEEZ様には、店内内装にリンクさせたシャビーなグレーにホワイトの縁取りを合わせました。軽くてしなやかなノンアイロン素材で、毎日の扱いも軽くしています。エステサロンmyneo様には、ロゴのイメージカラーである抹茶グリーンに有機的な植物柄のサテンを組み合わせました。ストレッチ素材で動きを妨げない仕様です。
かねもと矯正歯科様には、ポロシャツに合わせるショートサロンタイプをお作りしました。二色配色にして、見る角度によって表情が変わるようにしています。丈を短くしても安っぽく見せない方法は、配色とディテールで作れます。
文字だけの刺繍(店名やスタッフ名)は、版代がかかりません。刺繍工賃1,000円のみでお入れできます。ロゴマークを刺繍で再現する場合は、初回のみ版代5,000円〜と刺繍工賃1,000円をいただきます。版は保存しますので、次回の追加注文では版代は不要です。
スタッフ名を1枚ずつ変える場合も、文字刺繍であれば追加の版代は発生しません。
毎日洗うものですから、ここは軽くしておくに越したことはありません。ポリエステル系の生地はウォッシャブルで、アイロンがけがほぼ不要です。営業終了後に洗って翌朝に着られる、という運用が現実的に回ります。
エレワークのセミオーダーは1枚からお作りできます。既存の70種類以上のデザインをベースに、カラー・素材・刺繍をお選びいただく方式です。
| 枚数 | 1枚あたり(税抜・刺繍別途) |
|---|---|
| 1枚 | ¥19,800 |
| 2枚〜 | ¥16,500 |
| 5枚〜 | ¥11,000 |
| 10枚〜 | ¥9,350 |
| 20枚〜 | ¥8,250 |
| 30枚〜 | 別途お見積り |
納期は最短6週間(生産に約1.5ヶ月)です。100枚以上でゼロから設計するフルオーダーもご用意しています。こちらは日本製で1枚5,000円〜、納期は3〜5ヶ月です。別途、初期費用100,000円(税別)をいただきます。
小規模なサロンであれば、まずはセミオーダーで数枚お作りになり、使い勝手を確かめてから追加される流れが多くなっています。詳しい料金は料金ページ、制作の進み方は制作までの流れをご覧ください。
ポケットにファスナーを付け、開ければ中に溜まった髪の毛をそのまま出せるようにしたものです。当店の独自仕様で、美容師さんとのオーダーから生まれました。洗濯のときも開いて払うだけで済みます。
なりません。本数・位置・太さを、お使いのダッカールの厚みと利き手に合わせて決めます。タオル用のループも同様です。
一切つかない生地はありません。目の詰まった平滑な生地に撥水加工を加えることで、つきにくく、ついても払い落としやすい状態にできます。撥水はカラー剤やシャンプーの水はねにも効きます。
太ももの半分あたりまでなら35〜45cm、膝上に届かせたいなら50cmを目安にしてください。スタッフの身長にばらつきがある場合は50cmが収まりやすい寸法です。測るときは床からではなく、腰の位置から測ってください。
できます。同じデザインでサイズや色を分けてお作りいただけます。巻いて着るタイプ(カシュクールなど)は体型の適応幅が広く、ワンサイズでも対応しやすくなります。
文字だけの刺繍であれば版代は不要です。刺繍工賃1,000円のみになります。ロゴマークの場合は初回のみ版代5,000円〜が必要です。
お作りできます。セミオーダーは1枚からご注文いただけます。
ヘアパラダイム様には、複数の型をお作りしています。チャコールグレーの本体にグレーの紐を合わせた定番型。背中がクロスになるバックスタイル。裾にスリットを入れて足さばきを軽くしたもの。カシュクール型にロゴ刺繍を入れたもの。同じサロンの中でも、担当する仕事によって形を変えられるのがオーダーの利点です。
美容院kualium様には、黒×グレーの2配色に、上でご紹介したループとポケットを組み合わせた型をお作りしました。落ち着いた配色ながら、紐のグレーが差し色になって重たく見えません。裾に入れたスリットで、しゃがんだときの足さばきも軽くしています。
美容室・エステ・ネイルサロンの実際の制作事例は、サロンの事例一覧にまとめています。生地の質感や配色は、写真でご覧いただくのがいちばん早いと思います。
エプロンをスタッフ全員で揃えると、それだけでユニフォームとして成立します。エステサロンやネイルサロンでは、上下の制服を用意せずエプロン1枚で統一感を出す店舗も多くあります。エプロンをユニフォームとして使うという考え方は、費用を抑えながら店の印象を揃えたいお店に向いています。
発注の進め方やデザインの選び方、お客様の声についてはサロンのオリジナルエプロン制作ページに詳しくまとめています。あわせてご覧ください。
美容室のエプロンは、まず機能から決めるのが近道です。髪の毛が溜まらないポケット。ダッカールやタオルを掛けるループ。道具が倒れない仕切り。ハサミのポシェットと干渉しない設計。背中はバッククロス。
そのうえで目が詰まった平滑な生地を選び、必要なら撥水を足す。丈は腰から測り、膝上なら50cm。この順番で考えると、迷いがぐっと減ります。
とはいえ、お店の施術内容や道具立てによって最適解は変わります。「こういうものを入れたい」「ここが使いにくかった」という段階からで構いませんので、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。お店の動きに合わせてご提案します。
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